見える時間、変わる働き方

タイムトラッキングで見える化するフリーランスの「ワークフロー時間」:ボトルネック特定と効率改善事例

Tags: タイムトラッキング, ワークフロー, 効率化, フリーランス, 生産性向上, 時間管理

ワークフロー全体の時間、見えていますか?フリーランスの隠れた非効率を解消するタイムトラッキング

フリーランスとして働く皆様は、日々の業務において複数のプロジェクトやタスクを同時並行で進めていることと存じます。各タスクにかかる時間を計測することの重要性については、多くのフリーランスの方が認識されており、実際にタイムトラッキングツールを試された経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、個々のタスク時間だけでなく、「ワークフロー全体の時間」に注目したことはあるでしょうか。例えば、デザイン制作であれば「クライアントへのヒアリングから最終納品までの全工程」、ブログ記事執筆であれば「企画立案から公開、効果測定まで」といった一連の流れです。

このワークフロー全体にかかる時間には、個々のタスク時間の合計だけでなく、タスク間の移行にかかる時間、ツールの切り替え時間、クライアントや関係者とのコミュニケーションにかかる待ち時間など、一見捉えにくい「隠れた時間」が含まれています。これらの隠れた時間が見えないままだと、どこに非効率があるのか、どこがボトルネックになっているのかを正確に把握することが難しくなります。

タイムトラッキングは、このワークフロー全体の時間を見える化し、非効率な部分やボトルネックを特定するための強力なツールとなり得ます。今回は、フリーランスがタイムトラッキングによってワークフロー時間を見える化し、具体的な効率改善に繋げた事例をご紹介します。

ワークフロー時間を見える化することで見えてくるもの

タイムトラッキングツールを使って、個々のタスク時間だけでなく、より大きな単位である「ワークフロー」として時間を記録・分析することで、以下のような点が明らかになることがあります。

これらの情報は、漠然とした感覚ではなく、データとして見える化されるため、具体的な改善策を立てやすくなります。

タイムトラッキングによるワークフロー時間改善事例

ここでは、タイムトラッキングを活用してワークフロー時間を改善したフリーランスの具体的な事例を二つご紹介します。

事例1:デザイン制作ワークフローのボトルネック解消

あるWebデザイナーのAさんは、クライアントからのデザイン修正依頼に対する対応に時間がかかっていると感じていました。タイムトラッキングで「デザイン修正」というワークフロー全体の時間を記録したところ、デザイン修正作業そのものよりも、「クライアントからの修正指示の読み込み」「指示内容に関する確認メールのやり取り」「修正後のデザインデータのエクスポートと共有」といったタスク間の「つなぎ」に多くの時間を費やしていることが判明しました。

特に、クライアントからの修正指示が散漫であったり、使用する共有ツールがクライアントによって異なったりすることが、これらのつなぎの時間を増加させている要因であることが見えてきました。

そこでAさんは、以下の改善策を実行しました。

これらの改善により、デザイン修正に関わるワークフロー全体の時間が約20%削減され、より多くの時間を新規のデザイン制作や他の重要な業務に充てることができるようになりました。結果として、単位時間あたりの生産性が向上しました。

事例2:コンテンツマーケティング業務のコミュニケーション効率化

コンテンツライター兼マーケターのBさんは、複数のクライアントのブログ記事作成やSNS運用を請け負っていました。タスクごとの時間は記録していましたが、特定のクライアントとのやり取りを含むワークフロー(例:「ブログ記事企画提案→承認→執筆→確認→公開」)に時間がかかっていると感じていました。

ワークフロー全体の時間をタイムトラッキングで詳細に記録・分析した結果、記事企画の承認プロセスや、執筆途中の疑問点の確認、公開後の効果測定の報告書作成といった、クライアントとのコミュニケーションに起因する時間が想定よりも多く、これがワークフロー全体の進行を遅らせている主要因であることが明らかになりました。特に、クライアントへの確認メール作成や返信待ちに多くの時間を費やしていました。

Bさんはこの分析結果に基づき、以下の改善に取り組みました。

これらの改善により、クライアントとのコミュニケーションを含むワークフロー全体の時間が約15%短縮されました。メール作成や確認に費やしていた時間を削減できたことで、より多くの時間を記事執筆や戦略立案といった核となる業務に集中させることが可能となり、納品までのリードタイムも短縮されました。

ワークフロー時間を見える化するための実践ステップ

ご自身のワークフロー時間を見える化し、改善に繋げるためには、以下のステップが有効です。

  1. 主要なワークフローを定義する: ご自身の業務における主要な一連の作業フローをリストアップします。例えば、「新規クライアント獲得ワークフロー」「デザイン制作ワークフロー」「ブログ記事作成ワークフロー」などです。
  2. タイムトラッキングの設定を工夫する: タイムトラッキングツールで、これらのワークフローをプロジェクトやタグとして設定します。さらに、ワークフローを構成する主要な段階(例:企画、調査、設計、実装、レビュー、修正、納品など)をタスクとして詳細に設定します。
  3. ワークフロー全体を通して時間を記録する: 定義したワークフローの各段階で、使用ツールやコミュニケーションも含め、可能な限り詳細に時間を記録します。ツール間の切り替え時間や待機時間も、特定のタスク(例:「XXツールへ移行」「クライアント返信待ち」)として記録する工夫も有効です。
  4. データを集計・分析する: 記録した時間データをワークフロー単位で集計します。特定のワークフロー全体の所要時間、ワークフロー内の各段階にかかった時間、そしてタスク間のつなぎの時間がどれくらいかかっているかを分析します。
  5. ボトルネックと非効率を特定する: 分析結果から、想定よりも時間がかかっている段階や、頻繁に中断が発生している箇所、つなぎの時間が長い部分などを特定します。これが改善すべきボトルネックです。
  6. 改善策を実行する: 特定したボトルネックに対して、具体的な改善策を講じます。例えば、非効率なツールの見直し、コミュニケーション方法の変更、定型作業の自動化やテンプレート化、特定の時間帯にまとめて処理するなどです。
  7. 効果を測定し、継続的に見直す: 改善策実施後も同様に時間を記録し、ワークフロー全体の時間やボトルネックとなっていた部分の時間がどのように変化したかを測定します。定期的に分析を行い、継続的な改善サイクルを回すことが重要です。

まとめ:ワークフロー時間の見える化がもたらすビジネスへの好影響

個々のタスク時間だけでなく、ワークフロー全体の時間を見える化することは、フリーランスの働き方を次のレベルへ引き上げる可能性を秘めています。ボトルネックとなっている隠れた時間を特定し、具体的な改善策を実行することで、業務効率は向上し、納品までのリードタイムは短縮されます。

これにより、より多くのクライアントワークをこなす時間的余裕が生まれたり、自身のスキルアップや非請求業務(経理、営業、学習など)に時間を充てることが可能となります。結果として、収益の向上、ワークライフバランスの改善、そしてクライアントからの信頼獲得といった、フリーランスとしてのビジネス全体の成長に繋がります。

ぜひ、今日からご自身のワークフロー時間を見える化し、データに基づいた効率改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。