見える時間、変わる働き方

請求・経理業務を効率化:タイムトラッキングで非請求時間を削減し、フリーランスの収益を向上させる事例

Tags: タイムトラッキング, フリーランス, 請求業務, 経理業務, 効率化

フリーランスにとって見過ごせない「請求・経理業務」の時間コスト

フリーランスとして活動されている皆様にとって、クライアントワークに加えて避けて通れないのが、請求書作成や経費精算といった管理業務です。これらの業務は直接的に売上を生むわけではありませんが、事業を継続するためには必須であり、しばしば「見えない時間」として負担となりがちです。特に複数のクライアントを抱えている場合、月末月初などにこれらの作業が集中し、請求可能な作業時間を圧迫してしまうこともあるでしょう。

この「見えない時間」にどれだけ時間を費やしているかを正確に把握せずにいると、全体の時間管理が曖昧になり、適切な価格設定や収益性の評価が難しくなります。さらに、本来集中したいクリエイティブな作業や、スキルアップのための時間を確保することが困難になる可能性も考えられます。

しかし、タイムトラッキングを活用することで、これらの請求・経理業務にかかる時間を「見える化」し、効率化の機会を発見、最終的に収益向上やワークライフバランス改善に繋げることが可能です。本稿では、タイムトラッキングが請求・経理業務の効率化にどのように役立つか、具体的な事例を交えてご紹介いたします。

タイムトラッキングが請求・経理業務にもたらす価値

タイムトラッキングは、単にクライアントワークの時間を記録するだけのツールではありません。自身の事業運営にかかるあらゆる時間、もちろん請求・経理業務の時間も記録することで、多くのメリットが得られます。

  1. 正確な時間コストの把握: 請求書発行や経費精算、帳簿付けといった特定の管理業務に、実際にどれだけの時間を費やしているかを正確に把握できます。これにより、「思ったよりも時間がかかっている」という課題を具体的に認識できます。
  2. 非請求時間の全体像把握: 請求・経理時間だけでなく、コミュニケーション、学習、営業活動などの非請求業務全般の時間を記録することで、請求可能な時間と非請求時間のバランスを把握できます。これは、全体の稼働時間における管理業務の割合を客観的に評価する上で重要です。
  3. 効率化の機会発見: 記録された時間を分析することで、どの作業に時間がかかりすぎているか、繰り返し発生している非効率なプロセスはないかなどを特定できます。例えば、特定のクライアントの請求書作成に毎回手間取っている、領収書の整理に毎週決まった時間以上かかっている、といった具体的な課題が見えてきます。
  4. 価格設定や契約交渉への示唆: 非請求業務、特に必須の管理業務にかかる時間を把握することは、自身の時間単価をより正確に理解する上で役立ちます。これにより、将来的な価格改定や、サービス提供範囲の見直しを検討する際の根拠とすることができます。

これらの情報を得ることで、漠然とした「管理業務は大変だ」という感覚から、「請求書作成に月平均3時間かかっている。これを1時間に削減できれば、他の作業に2時間充てられる」といった具体的な改善目標を設定できるようになります。

タイムトラッキングによる請求・経理業務効率化事例

実際にタイムトラッキングを活用して、請求・経理業務を効率化し、働き方を改善されたフリーランスの事例をいくつかご紹介します。

事例1:請求書作成時間の可視化とテンプレート化による削減

あるフリーランスのWebディレクターは、月末に複数のクライアントへの請求書作成に多くの時間を費やしていることに課題を感じていました。タイムトラッキングで請求書作成時間を記録したところ、クライアントごとに請求項目を手入力したり、毎回異なる形式に合わせて調整したりしているため、一件あたり平均20分、合計で月3時間以上を費やしていることが判明しました。

この課題に対し、彼は以下の対策を実行しました。

これらの取り組みにより、請求書作成にかかる時間は一件あたり平均10分以下、合計で月1.5時間程度にまで削減することができました。削減できた時間は、新たな営業活動や既存クライアントへの付加価値提案など、収益に繋がりやすい活動に充てることができています。

事例2:経費精算・帳簿付けの週次ルーティン化とツール活用

あるフリーランスのデザイナーは、領収書が溜まりがちで、月末にまとめて経費精算や帳簿付けを行う際に多くの時間を費やしていました。タイムトラッキングでこの作業時間を記録したところ、一度にまとめて行うと集中力が続かず、検索や確認に時間がかかり、月に4時間以上を費やしていることが分かりました。

そこで彼は、タイムトラッキングで「経費精算・週次」「帳簿付け・週次」といったタスクを作成し、毎週金曜日の午後に30分ずつ時間を確保するルーティンを導入しました。

この週次でのルーティン化とツールの活用により、月末のまとめての作業負担が大幅に軽減され、経費精算・帳簿付けにかかる合計時間は月2時間程度に削減されました。加えて、常に経費や売上の状況を把握できるようになり、経営状況の把握も容易になりました。

事例3:クライアントごとの管理時間把握と対応見直し

複数のクライアントから継続案件を受注しているフリーランスエンジニアは、一部のクライアントとのコミュニケーションや報告書作成に想定以上に時間を取られている感覚がありました。タイムトラッキングでプロジェクトごとの開発時間だけでなく、「A社 - 報告書作成」「B社 - 定例MTG準備」「C社 - メール対応」といった管理時間を記録しました。

記録を分析した結果、特定のクライアントC社とのメールのやり取りや簡単な仕様確認の時間が予想以上に多く、月に合計で平均5時間以上を費やしていることが判明しました。これは請求可能な開発時間を圧迫しているだけでなく、頻繁な中断が他の作業の集中力にも影響を与えていました。

このデータに基づき、彼はクライアントC社に対し、以下の提案を行いました。

クライアントとの丁寧な対話の結果、コミュニケーション頻度を見直すことが合意され、メール対応にかかる時間が月2時間程度に削減されました。このように、タイムトラッキングで具体的な時間データを提示することで、感覚ではなく事実に基づいてクライアントと建設的な話し合いを進めることが可能になります。

事例から学ぶ実践のヒント

これらの事例から、請求・経理業務の効率化のためにタイムトラッキングを始める上でのヒントが得られます。

まとめ

請求書作成や経費精算といった請求・経理業務は、フリーランスにとって欠かせない非請求業務です。これらの業務にかかる時間は見過ごされがちですが、タイムトラッキングによってその時間を正確に把握し、「見える化」することで、多くの改善の機会が生まれます。

今回ご紹介した事例のように、時間を記録し分析することで、非効率なプロセスを特定し、ツールの導入やルーティンの改善、さらにはクライアントとのコミュニケーション方法の見直しといった具体的な対策を講じることが可能になります。結果として、請求・経理業務にかかる時間を削減し、本来集中すべき作業や自己投資、休息といった、より価値の高い活動に時間を充てることができるようになるのです。

タイムトラッキングは、請求可能な作業時間だけでなく、事業運営全体にかかる時間を最適化し、フリーランスとしての働き方をより効率的で収益性の高いものに変えていくための強力なツールです。ぜひ今日から、請求・経理業務の時間もタイムトラッキングで記録することをおすすめいたします。